近年、訪日外国人観光客の増加が目覚ましいものとなっています。観光庁の統計によると、訪日外国人の年間数はパンデミック以前の2019年に過去最高の3,188万人を記録し、その後も観光需要が回復を見せています。

このような背景から、日本の観光市場は国際的な注目を集める一方で、企業が競争力を維持し続けるためには、外国人観光客市場に特化した需要調査が不可欠です。

本記事では、インバウンド需要調査の基本から具体的な方法、実施のポイントまでを解説します。

インバウンド需要調査とは

インバウンド需要調査とは、日本に来る外国人観光客の消費行動や好み、旅行の目的などを分析するための調査のことを言います。これにより、ターゲットとなる外国人観光客層のニーズを正確に理解し、効果的なマーケティング戦略を立てることができます。

特に、消費行動の傾向や観光する時期、人気の観光地や飲食店といったデータは企業が顧客体験を向上させるために重要なものとなっています。

なぜ外国人観光客市場に注力するのか

経済効果の拡大

外国人観光客による日本旅行での消費行動は、観光業だけではなく、宿泊、飲食、交通、エンターテイメント産業全体に波及します。

2024年の外国人観光客全体での消費額は約5.3兆円で、日本経済に大きい影響を与えるまでになりました。政府は2030年までに、観光客数を6,000万人にまで増加させることを目標としています。

国際的な競争力の向上

正確なマーケティングにより外国人観光客をさらに増加させることで、日本の文化やサービス品質をグローバルに発信する機会も増えていきます。

日本の観光資源がもとから豊かということもあり、観光客の数を増やすことが、競争力の上昇に直結します。

日本のマーケット縮小への対応

日本国内は少子高齢化が深刻に進んでおり、日本人消費者の市場が縮小しています。そのため、企業の今後の成長戦略において、国外市場に目を向けることが不可欠となります。

インバウンド需要調査のメリット

ターゲット層の明確化

需要調査を通じて、外国人観光客の国籍、性別、年齢などの属性や、消費行動をくわしく把握することができます。

これにより、特定の国籍や地域に焦点を当てたプロモーションの展開、年齢層や旅行目的に合わせた商品の開発や観光回数に応じたリピーター戦略の立案ができます。

商品・サービスの質の向上

調査から得たデータは、提供する商品やサービスの改善に役立ちます。

ターゲット層のニーズや好みを理解することにより、外国人向けに特化したメニューやサービスの開発、多言語表示やスタッフの育成などのインバウンド対応の強化、季節やイベントに合わせた柔軟な商品展開などができます。

競争優位性の確保

競合他社との差別化を図るためには、外国人観光客のニーズを的確に捉えることが重要です。

調査を実施することにより、他社との差別化につながる顧客体験の強化、新興国やニッチ層などの新しい市場の開拓、他社が提供していないユニークなサービスの提案をすることができます。

インバウンド調査に必要な視点

文化的背景の考慮

外国人観光客の文化や価値観を理解することは、正確な調査設計の出発点です。文化的な違いを理解しないと、調査結果に偏りができたり、ターゲットのニーズを十分に把握できなかったりするリスクがあります。

具体的なポイントとしては、宗教や慣習、行動パターン、価値観の違いなどを理解する必要があります。

地域ごとの特性の理解

外国人観光客が訪れる地域によってニーズや関心は違ってきます。そのため、地域特性に応じて調査を柔軟にカスタマイズする必要があります。

具体的なポイントとしては、都市部と地方、季節ごと、地域ごとに求められているものを把握しましょう。

セグメント化された視点

すべての外国人観光客を一括りにするのではなく、細かくセグメント化して分析することが大切です。

具体的なポイントとしては、国籍、観光の目的、年齢ごとに結果を分析し、グループごとのニーズを理解しましょう。

調査手法の選び方

オンライン調査

大規模なデータ収集が必要だったり、特定の属性を持つターゲット層に絞ったりして調査したい場合は、オンライン調査がおすすめです。オンライン調査は、コストが低く、効率的に多くの外国人観光客の意見を収集できる手法です。SNSやアンケートツールを活用することで、迅速かつ広範囲なデータを取得できます。

フィールド調査

くわしい意見や具体的なエピソードを収集したり、実際の行動や感情を深く理解したりする必要がある場合は、フィールド調査がおすすめです。フィールド調査とは、観光地や空港、宿泊施設などの実地に行き、直接観光客にインタビューを行う方法です。この手法では、リアルタイムで生の声を集めることができます。また、質問への理解が不十分な場合、その場で補足説明ができます。

観察調査

観光施設や店舗での動線や商品の選ばれ方、無意識な行動やパターンを把握したい場合は、観察調査がおすすめです。観察調査とは、文字通り観光客の行動を直接観察して、無意識の行動や嗜好を把握する手法です。この手法では、回答者の主観やバイアスの影響を受けずに、行動そのものを記録することができます。

インバウンド需要調査の実施において重要なポイント

目標設定の明確化

調査を始める前に、明確な目標を設定することが重要です。目的が不明確だと、調査の方向性がぶれてしまい、結果として収集データが有効に活用されない可能性があります。例えば、「訪日外国人の消費行動を理解する」だけでなく、「20代の欧米人観光客がどの観光地で最も消費しているかを把握する」など、具体的なゴールを設定します。

データの信頼性確保

収集したデータが正確で信頼できるものでなければ、調査結果に基づく戦略も効果を発揮しません。無作為抽出や対象者の分布を工夫することで偏りを最小限に抑えたり、十分なサンプル数を確保したりすることで、統計的な信頼性を向上させましょう。

結果の活用計画

データを収集した後、それを効果的に活用するための計画が必要です。調査結果を分析し、具体的なアクションにつなげることで価値を引き出せます。調査結果を分かりやすくまとめたレポートを作成して関係者に共有したり、データをもとにして、マーケティング戦略や商品開発計画を練ったりしましょう。

外国人市場を活用する未来への展望

訪日外国人市場の需要調査を通じて、日本企業はグローバルな成長機会を掴むことができます。また、持続可能な観光戦略の一環として、地域経済の活性化にも貢献します。

おわりに

外国人観光客市場の需要調査は、企業が競争力を維持し、さらなる成長を遂げるための重要な手段です。本記事で紹介した方法や視点を参考に、効果的な調査を実施し、日本市場の魅力を最大限に発信しましょう。

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