日本を訪れる外国人観光客は年々増加しています。コロナの流行が原因で一時は減少しましたが、2024年3月には、単月として初めて300万人を超えました。その中でも、中国からの観光客はおよそ45万人と、韓国、台湾に次ぐ人数を記録しています。そのマーケットの大きさと、数年前の「爆買い」が日本経済に大きなプラスをもたらしたことなどを考慮すると、中国人観光客をメインのターゲット市場として見ている方は多いでしょう。

 そこで大事になってくるのがSNSです。インスタやXなどの日本に馴染みがあるものだけではなく、中国独自のプラットフォームを理解しておく必要があります。中国SNSを使いこなせることができれば、同業他社との差別化を図ることができ、中国人マーケットの獲得・拡大に繋がります。

 本記事では、中国で特に利用者が多いSNSをランキング形式で6種類紹介し、その特徴、メリット・デメリットを説明していきます。

 

中国SNSランキングとそれぞれの特徴

 4位 百度貼吧(Baidu Tieba)

 百度貼吧(Baidu Tieba)は、中国の最大手検索エンジンである「百度(Baidu)」が提供するオンラインフォーラムサービスです。百度自体は2000年からサービスを開始し、百度貼吧は2003年から始まりました。中国国内では、約70%のシェアを誇っています。

 特徴としては、IDによる匿名性と多様なコンテンツ力が挙げられます。ユーザーはIDを用いて、匿名での投稿やそれに対するコメントをすることができます。また、カテゴリー別で興味のある投稿だけを見ることができます。例として、政治、エンターテインメント、スポーツ、趣味、勉強などがあります。日本国内の5ちゃんねるのような掲示板だと考えてみてください。

 メリットとしては、ユーザー自身の関心に応じて、様々なコンテンツを投稿・閲覧し、匿名で他のユーザーと交流することができる、という他の一般的なSNSに見られるようなものがあるといえるでしょう。

 デメリットは、フェイクの情報や質の低いコンテンツが存在しているということです。匿名で書き込めるため、偽の投稿ができてしまい、結果的にコンテンツ自体の質が低くなってしまいます。これも他のSNSと共通していますね。

 3位 小紅書(Xiaohongshu / Red Book)

 小紅書(Xiaohongshu / Red Book)は、中国のソーシャル・コマース・プラットフォームであり、ユーザーが商品のレビューや体験を共有し、オンラインショッピングを行うことができるアプリです。2013年に大学生2人が立ち上げた上海小红书信息技术有限公司という会社によって作られました。ユーザーは2億人ほどで、都市部を中心として大人気のSNSとなっています。最近では日本でもよく知られるようになってきており、「RED」という通称があります(ここでは呼称をREDに統一してお話します)。

 最大の特徴は、女性のユーザーが非常に多く、7〜8割を占めているということです。ユーザーの年齢層は10代から30代と若く、トレンドのファッションアイテムやアイドル風メイク、美味しいレストランなどのいわゆるインスタグラムのような投稿が人気です。また、もう1つの特徴として、「SNS型ECアプリ」という立ち位置が挙げられます。サービス開始直後は写真投稿とそれに対するコメント機能のみでした。しかし、2014年からECカートの機能が追加され、商品を購入することができるようになりました。これは、ユーザーの大半を占めている女性たちが比較的裕福で購買力があり、他の人が持っている商品を紹介する投稿がきっかけで、その商品を他のサイトで買うということが多かったためです。そのため、現在ではインスタグラム+アマゾンという例えをされることも多いそうです。

 メリットとしては、ユーザーの口コミ力が挙げられます。中国は口コミ命の国民性なので、行きたい店や買いたい商品などに他の人が高評価をしているかどうかを重視します。特にREDでは、その傾向が非常に強く見られます。自身の店に多くのREDユーザーから良い内容の投稿をしてもらえると、集客に繋がる可能性が高いです。また、投稿のメインが写真であるため、ビジュアル的にもユーザーの関心を惹きやすいです。最近ではライブ配信機能も追加され、ユーザーアクティブ度が上昇していることも良い傾向だと言えます。

 デメリットとしては、ペナルティがあるということです。RED運営の定めているルールに違反してしまった場合に課されます。主な違反のパターンは、DMを複数のユーザーに大量に送る、ユーザーを自社リンクに誘導するなどです。初回の違反は24時間のコメント・DMの禁止という軽いものですが、徐々に重いペナルティが課され、最終的にはアカウントを永久凍結されるため、注意が必要です。

 2位 淘宝直播(Taobao Live)

 淘宝直播(Taobao Live)は、アリババグループが運営する中国最大のオンラインショッピングプラットフォーム「淘宝(Taobao)」の一部であり、ライブストリーミングを利用して商品を紹介・販売するサービスです。2016年に開始され、コロナ禍を経て世界的に人気が高まったライブコマースの先駆者的サービスに成長しました。現在では9億人ほどが使用しています。

 最大の特徴としては、ライブストリーミング販売が挙げられます。ライブホストが服、美容品や家電などの多様なカテゴリーの商品を紹介し、実際に着た時のフィット感や使い心地を紹介し、視聴者がコメントをします。質問が投稿された際には、ホストがすぐに回答することで、購入時の疑問を徹底的になくすことができます。また、ライブ中に限定クーポンを配布したり、購入リンクを直接貼ったりしてユーザーができるだけ早く購入できるような工夫をしています。

 メリットとしては、やはりライブストリーミング特有のものがあります。大きなものとしては、マーケティングコストの削減です。視聴者データを分析することにより、ターゲット層のニーズや関心をリアルタイムで把握できます。これにより、無駄な広告支出を避け、より効果的なターゲティングが可能になります。ライブストリーミング中は視聴者の反応がすぐに見られるため、どのように紹介するのが良いのかなどの戦略を即時修正することができるのです。また、配信が終わった後は動画として残すことができるため、その一部をSNSに上げたりして、コンテンツを別の広告として再利用することができます。

 デメリットとして、技術的な問題とブランドイメージの低下が挙げられます。インターネットの接続が不安定だったり、視聴者が殺到しすぎてサイトが落ちるなどのシステム上のエラーが発生したりして、ライブストリーミングを予定通り行えない場合があります。また、ライブを始めても、コンテンツの質が低いとブランドイメージの低下を招くおそれがあります。視聴者からの質問に答えられなかったり、商品の質が悪いと判断されたりした場合には、視聴をやめてしまう人も多くいます。

 1位 微博(Weibo)

 微博は中国で最も人気のSNSプラットフォームです。中国語で「ミニブログ」を意味しており、日本で言うTwitterのようなサービスを提供しています。2009年に新浪コーポレーションによって開始され、現在は7億人ほどのユーザーがいます。

 特徴は「中国版Twitter」と呼ばれるほどTwitterに類似したサービスが挙げられます。文字数制限があったり、個人や企業が公認アカウントを持てたりなどの機能があります。また、ニュースをチェックしたり、好きな有名人やブランドの最新情報を見たり、リアルタイムでトレンドになっているものを把握するために使われています。

 メリットとしては、マーケティングのしやすさが挙げられます。最大手のプラットフォームであり、ユーザー層も10代から30代の購買意欲が最も強いと言われる年齢がメインです。また、広告料も比較的安く、4種類のフィード広告・イベントツール・アドネットワーク・ファンコネクト広告というプロモーションのためのツールが用意されているため、企業マーケティングが比較的簡単に行えるといえるでしょう。

 デメリットとしては、検閲のリスクと競争率の高さが挙げられます。微博は中国国内のネット検閲と協力して、サービスに関する投稿を厳しく管理しています。一部のURL短縮サービス(Googleのgoo.glを含む)を使用するリンクを含む投稿、またはブラックリストのキーワードを含む投稿は認められていません。政治的にデリケートなトピックに関する投稿も、手動でチェックした後に削除されます。また、競争率の高さについては、やはり最大手のプラットフォームであることが関係しています。企業を含めた多くのユーザーが使用しているため、この中で差別化を図るのは少し難しいかもしれません。

 マーケティングにいちばん向いているSNSは?

中国で人気の4つのSNSを紹介してきましたが、どれが使いやすそうでしたか? 個人的には、3位のREDが特に良いと考えています。金銭的な余裕がある若い女性がメインのユーザーとなっているため、旅行で日本などの海外に訪れて気に入った店や食事を紹介する、といった投稿が多いと考えられます。例として飲食店経営者の場合は、最初はご自身でREDのアカウントを運営して店の外観や食事の写真を載せ、気になったREDユーザーが実際に訪れて写真を投稿し、口コミが広まっていく、というような使い方が効果的だと考えています。

また、REDでは写真の投稿よりも動画の投稿の方が拡散されやすい、という傾向があります。音声が入っていたり、写真と比べると加工しにくかったりといった特徴があるため、実際の雰囲気がより伝わりやすいのかもしれません。なので、店内外の様子を撮影して投稿してみるのが良さそうですね。上述したように、アマゾンのようなECサイトでもあるため、商品を直接出品して口コミを書いてもらうのも手です。最近では、日本の若い女性の間でも徐々に人気のアプリとなってきています。そのため、日本人女性の新規ユーザー獲得も可能かもしれません。

終わりに

いかがでしたか? 中国には私たちになじみのない独自のSNSが存在しています。現在、ビジネスを拡大するうえで無視できない存在となっている中国人マーケットを取り入れるためには、扱う商品やシーンに合わせてこれらのSNSをうまく使い分けていくことが特に重要となってきます。もし、1日にどれくらいの人数がどのSNSにアクセスしているのか、というような具体的な数値が知りたくなった場合は、弊社の「Guidable Research」サービスをお試しください。日本在留外国人のデータを独自で持っているため、他のサービスと比べると安価になっております。ぜひご検討してみてください!