海外出身で、日本に中長期滞在している人の課題として、「日本人の価値観がわからない」というものがあります。今回の記事では、日本の価値観の独自性や、世界標準からの違い(ずれ)に焦点を当てています。

日本人と世界標準との価値観の違い

日本人の価値観が世界的な標準からずれている例として、以下に上げるようなものがあります。

集団主義 vs 個人主義

日本は伝統的に集団主義的な社会で、個人よりも集団全体の調和や協調を重んじます。会社や学校、コミュニティなどで、周囲との調和を維持することがまず優先され、自己主張をおさえることが「美徳」とされています。

一方で欧米諸国は個人主義が強く、個人の権利や意見を尊重し、自立性を重んじる文化があります。この点で日本は世界の多くの国々と異なる価値観を持っています。

ハイコンテクスト vs ローコンテクスト文化

日本はハイコンテクスト文化の代表例であり、コミュニケーションにおいて言外の意味や、暗黙の了解が重要視されます。

言葉にしなくても状況や空気を読むことがもとめられ、相手の立場や感情を考慮することが基本です。一方、欧米のローコンテクスト文化では、コミュニケーションはより明確で直接的です。このため日本の曖昧さや間接的な表現は、外国人にとって誤解を生むことがあります。

勤勉さと労働倫理

日本では長時間労働や仕事に対する勤勉さが強調され、仕事に対する責任感や忠誠心が非常に高いです。残業が当たり前のように行われ、休暇の取得率が低いことも珍しくありません。

この点は、効率性やワークライフバランスを重視する世界標準からのズレといえます。多くの国では、労働時間の短縮や有給休暇の活用が推奨され、労働者の健康や幸福が重視されています。

このほかにも「恥をかかない」「年功序列と縦社会」「おもてなし、礼儀正しさ」などの文化的な傾向が日本にはあり、外国人にとってなじみがない価値観が形成されています。

日本人にとっても、アフリカの奥地の部族の暮らしに入るとわからないことが多いと感じそうですが、外国人も先進国のひとつであるとされているこの世界の辺境的島国に入ると、そこには非常に複雑で、まったく理解できない精神世界が張りめぐらされていることに気づいて戸惑っているのです。

外国人にとって特にわからない「空気を読む」

外国人が日本において「空気を読む」という概念に戸惑う典型的な状況はいくつかあります。
前述しましたが、日本の超ハイコンテクストな文化では、明確に言葉にしなくても、状況や相手の非言語的なサインを読み取ることが重要とされます。

日本人も学生時代にはこのハイコンテクストがわからずに、「クラスメイト全体から無視される」「クラブ活動で除け者にされる」「友人グループから取り残される」という非言語的な教えを受けます。

多感な学生時代にこの「空気を読む」というマナーを何年も受けた後、わたしたちはそのような体験をしたことをすっかり忘れてしまいます。そしてまったく空気を読むことをしない外国人に出会い、このことに面食らってしまうというわけです。

このような「空気を読む文化」に育っていない外国人にとって、日本で戸惑いを感じるシーンが多いです。以下では具体的な例を紹介します。

会議や職場での意見表明

日本では、会議やグループディスカッションにおいて、全員が積極的に意見を述べるわけではありません。特に、上司や年上の人が話している場合は、まわりが同意する傾向が強く、異なる意見があっても、直接反論することを避ける文化があります。

外国人は、意見を述べても明確な反応がない場合や、反対意見が表明されない場面で、空気を読む必要があると感じることがあります。

あいまいな返事や依頼

日本では、否定的な返事を直接いわずに、あいまいな表現を使うことがよくあります。

たとえば「ちょっと考えさせてください」「難しいかもしれません」といった言葉が使われることがありますが、これは実際には「NO」を意味することが多いです。
外国人はこうした間接的な言い方を理解できず、相手が本当にどう思っているのか判断できないことがあります。

飲み会や食事の場

日本では、特にビジネスの場での飲み会や食事の場で、上下関係や礼儀を意識することが重要です。たとえば、上司や目上の人にお酌をしたり、乾杯の際にグラスを少し低くするなど、さまざまな暗黙のルールがあります。

これらの微妙な動作や礼儀を「空気を読んで」行うことが求められますが、外国人にとってはそれが自然にできないことがあります。

たいていの日本人も、こうした礼儀を大学のクラブ活動を通してや、新入社員として会社で過ごす数年で学びます。

感情や意見の表現

日本では、特に職場や公の場では感情を強く表現することが好まれません。たとえば、怒りや不満を直接表現することは避けるべきとされています。

外国人が感情をストレートに表現したり、問題をすぐに指摘する場合、それが「空気を読まない」と見なされることがあります。相手の表情やトーンを読みとり、感情をコントロールすることが日本では重要とされます。

予定や依頼の断り方

日本では、予定や依頼をことわるときに、直接的に「ことわる」というよりも、遠回しにいうことが一般的です。

たとえば、誰かが食事に誘ったときに「今日はちょっと…」というような表現を使って暗に断ることが多いです。外国人はこれをただの予定確認と捉えてしまい「空気を読んで」断る意図を汲み取れないことがあります。

公共の場での振る舞い

日本の公共の場では、他人に迷惑をかけないようにすることが重要視されます。電車の中での電話や大声での会話、エスカレーターでの立ち位置など、多くの暗黙のルールがあります。これを知らない外国人が「空気を読まずに」ルールに反してしまうと、まわりの人々に迷惑だと思われることがあります。

返事や相槌

日本では、会話中に相手の話をよく聞いていることを示すために、「うん」「そうですね」などの相槌を打つことが一般的です。外国人がこの文化に慣れていないと、相槌が少ないことで「話を聞いていない」と誤解される場合があります。これもまた「空気を読む」必要がある場面のひとつです。

おわりに

外国人にとって、日本の掃除が行き届いている様子、きれいに整理されている様子は魅力的に映る反面で、実際にその中で暮らし初めて生活が始まると難しさを感じることも多いです。

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