中国のリテールマーケットは、全体を通して急成長しています。市場規模は2024年度末に1.94兆USDに到達すると推定されています。

特にTmallやJD.comなどのECサイトの発達が目覚ましく、リテールマーケットの核と言っても過言ではありません。これからの国内の経済成長にあわせ、2029年には2.87兆米ドルに達すると考えられます。

では、なぜここまで市場規模が拡大したのでしょうか。そこで本記事では、中国のリテールマーケットの成長要因を解説していきます。

中国ECサイトの過去の動向

上の図は2019年から2023年までの中国ECの市場価値をUSD(単位:兆)で表したものです。

2019年から2020年までと2020年から2021年までの成長率を見比べてみると、後者の方がより数値が大きいことがわかります。

これはコロナの世界的な流行が原因であると考えられます。中国国内での外出制限でオンラインショッピングの利用が拡大したことによってECサイトが発達し、2021年以降の数値に反映されたのでしょう。

また、海外への渡航が禁止されていたため、ほかの国で商品を買うことができなかったことも大きいです。

国内のECサイトで海外製品の取り扱いを増やすことにより、旅行先でブランド品を買っているような高級志向の富裕層にも利用してもらえます。海外のECサイトで購入するよりも簡単ということもあって、海外ブランドを手に入れる手段の1つとなってきています。

中国ECサイトの成長要因

主な要因としては、中国政府の政策方針キャッシュレス決済の普及消費者の収入の増加の3つがあげられます。

以下から説明していきます。

中国政府の政策

中国政府は自国産業保護という政策をとっています。これは外国企業の国内の台頭により、国内企業が弱体化することを防ぐ政策です。製造業や技術分野が特に保護されていますが、リテールマーケットも例外ではありません。

政策の一部であるイノベーションの促進によって、ECサイトの競争力が増しています。

例えば、人工知能を利用した消費者個人の好みの解析、ビッグデータ分析による流行の把握など、テクノロジーを取り入れることによって、サイト自体をより使いやすくすることができます。

また、スマホで商品を購入できるモバイルコマースの普及もECサイト利用の手助けになっています。

キャッシュレス決済の普及

「キャッシュレス大国」と呼ばれるほど電子決済が進んでいることも、ECサイト拡大の要因の1つです。

「デジタル人民元(DCEP)」の導入

中国政府は中央銀行デジタル通貨(CBDC)である「デジタル人民元(DCEP)」を発行し、既存のキャッシュレス決済市場をさらに強化しています。デジタル人民元は、紙幣やコインの代替としての機能を持ち、スマートフォンのアプリを使って取引できる通貨です。

消費者や企業の利用促進を目的に一部地域で試験導入され、将来的には全国規模での普及が見込まれています。

これにより、決済の透明性が高まり、不正取引の監視も強化されます。

電子決済インフラの整備

政府は電子決済を普及させるために、特に農村部や地方都市でのインフラ整備を推進しています。

インターネット環境が整備され、スマートフォンの普及が進んだことで、Alipay(支付宝)やWeChat Pay(微信支付)といった電子決済サービスが広く利用されています。

これらの電子決済サービスを活用した消費者向けキャンペーンや割引制度も導入され、キャッシュレス化が促進されています。

現金使用の制限

都市部では現金を使わない「無現金化」政策が進められ、バス、タクシー、レストラン、小売店など幅広い場所で電子決済が利用可能です。一部店舗では現金での支払いができない場合もあり、キャッシュレス化が推進されています。

この取り組みは公共料金や税金の支払いなどにも拡大しており、行政手続きも電子化されています。

電子決済によるデータ管理と金融包摂

中国政府は、キャッシュレス決済により得られる膨大なデータを活用し、金融リテラシーが低い層や小規模な事業者にも金融サービスが行き渡るようにしています。

これにより、金融包摂(すべての人が金融サービスを利用できる環境の確保)も進められています。

加えて、電子決済の普及により、消費者の購買行動や企業の取引データが管理されやすくなり、税収の正確な把握や金融犯罪の抑止にも寄与しています。

電子商取引やモバイルバンキングの発展

キャッシュレス社会の実現に向けて、電子商取引(EC)やモバイルバンキングの発展も政策の一環として進められています。政府は企業のデジタル化を支援し、決済手数料の軽減などのインセンティブを提供することで、企業のキャッシュレス導入を奨励しています。

消費者の収入の増加

消費者の収入、いわゆる「可処分所得」が増加したことも大きいです。

可処分所得とは住民税や所得税などの税金を支払った後に残ったもので、消費者がニーズや欲求に応じて消費するものです。例えば家賃、食料品の買い物、ガソリン代などは可処分所得から支払われます。

可処分所得が増加すると、世帯が貯蓄または支出できるお金が増え、当然消費の増加につながります。消費者支出は需要の最も重要な決定要因の 1 つです。企業の収益性を維持し、新しい従業員を雇用するための需要を生み出します。

可処分所得の増加は、人々がより多くの商品や物を購入するのに役立ち、間接的にリテールマーケットの成長を促進します。

おわりに

いかがでしたでしょうか。本記事では、中国のリテールマーケットの成長要因を解説しました。

ECサイトをはじめとしたリテールマーケットの市場価値や規模は、その国の経済状況に大きく左右されます。中国ECの動向を知るためには、今後も中国の経済活動に注目しておく必要がありそうです。

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