株式会社良品計画が展開するブランド、無印良品。ブランド名を付けないことによって商品価格の上昇を防ぐという考えのもと、「ブランドのないブランド」として誕生しました。

そんな背景もあり、日本では一般的で身近なブランドとして有名な無印良品ですが、海外では違った売り出し方をしていることをご存じでしょうか。

本記事では、無印良品の海外ブランドである「MUJI」のグローバルビジネスの成功について解説していきます。どのような取り組みが、MUJIを日本企業随一とまでいえる海外展開成功までつなげたのでしょうか。

「MUJI」とは?

日本と違ったイメージ

比較的安くて手に取りやすい商品を扱う無印良品とは違い、「MUJI」は少し値段が高めのセンスが良いブランドというイメージがあります。

日本と同じように、コマーシャルなどのプロモーションを大々的に行わないため、知る人ぞ知る洗練されたブランド、という受け入れられ方をしています。

そのため、若者やデザイナー、クリエイターなどの感度の高い人々に好評のようです。

店舗数はアジアが多め

2024年11月時点で、無印良品が637店舗、MUJIが689店舗あり、海外の店舗数が国内店舗数を上回っています。32か国で展開しており、海外売上比率は2023年8月で約41%です。東アジアや東南アジアなどに特に多く出店していますが、北米や中東、ヨーロッパを含めた様々な地域に展開しています。

2025年8月までには、海外の店舗数を746店舗とすることを目標としています。

中国での稀有な成功

MUJIは日本企業としては珍しく、中国での展開を成功させています。多くの企業が撤退するなか、MUJIは中国だけで361店舗を展開しています。

ECの発達によって実店舗が廃れてきている同国において、これはとても稀なことです。

MUJIの海外ビジネス:失敗から成功へ

過去の失敗要因は3つ

MUJI初の海外進出は1991年7月、イギリスでした。同国のリバティ社とのパートナーシップ契約により、ロンドンに1号店がオープンしました。同年11月には香港の百貨店ウィンオングループとの合弁会社によって、香港1号店もオープンし、翌年にはフランスにも進出しました。

一部の感度の高いクリエイターには好評を得ましたが、初めての海外事業は黒字になることはなく、1998年にアジアから撤退しました。それから2001年に香港に再上陸するまでは、アジアの店舗はゼロの状況でした。

この失敗の要因は、以下の3つがあげられます。

他社とのパートナーシップ

先ほど書いたように、MUJIはイギリスではリバティ社、香港ではウィンオングループと組んで出店しました。しかし、この他社とのパートナーシップを行うなかで、戦略やオペレーションの足並みを揃えられなかったことが要因の1つだと考えられます。

「ドミナント戦略」の失敗

当時のMUJIは、特定の地域に店舗を複数展開し、その地域でのシェアを獲得するという「ドミナント戦略」を採用していました。しかし、プロモーションに力を入れていなかったため、MUJI自体の認知度がなく、高い利益をあげることはできませんでした。

ヨーロッパの家賃による赤字

MUJIは1998年のアジアからの撤退以降も、ヨーロッパの店舗はそのまま営業していました。これは経営状況が良かったからではなく、ヨーロッパの物件契約期間が20~30年にわたり、途中解約できないからです。

そのため、家賃がどんどん経営を圧迫し、赤字の店舗が増えていきました。

やがて成功へ

2001年に社長に就任した松井忠三氏は、10年以上も赤字が続いていた海外事業を撤退させることはありませんでした。中には黒字の店舗もあり、撤退した地域の人から再出店を求められていたからです。

失敗した要因を徹底的に分析し、以下の解決策を生み出しました。

51%の出資比率

他企業との足並みが揃わないという課題では、51%の比率で出資をして、経営の主導権を握ることにより解決しました。半分を超える出資、もしくは100%子会社化することで、自分たちの方針で経営ができるようにしています。

「攻め」から「守り」へ

ドミナント戦略は行わずに、1店舗の経営に注力する戦略に変えました。以前までは同じ地域に店舗をどんどん出していましたが、まずは1つだけ出店して、その店舗が黒字になってから、また新しく出店するようになりました。

MUJIはプロモーションをほとんど行わないので、認知されて売り上げが上がるまで時間がかかります。そのため、「攻め」の戦略から、より適した「守り」の戦略に転換したと言えるでしょう。

物件探しも自分たちで

家賃による赤字化を防ぐため、不動産仲介業者を利用せずに、自社での物件探しから家賃の交渉までを行いました。これにより、一等地にあっても比較的家賃が比較的安く、2階の面積が広い物件を借りることができるようになりました。

MUJIの海外ビジネス戦略

このように海外展開の方針を切り替え、2003年には「ミラノサローネ」というイタリア・ミラノで毎年4月に開かれている世界最大の家具の見本市に出展しました。これが現地の高感度な層にMUJIを認知させるきっかけとなり、翌年には同市に進出しました。

その後、順調に海外事業を拡大し、やがてMUJIの店舗数は国内の店舗数を上回りました。ここまでの大成功につながった戦略は、上にあげたものだけでなく、以下の3つも考えられます。

徹底的なローカライズ

海外事業を黒字にした松井氏は、「グローバルマーケットというものは存在しない。ローカルマーケットがたくさんあるだけ」という考えのもと、MUJIの店舗や商品を展開している国と地域にローカライズさせています。

例として2004年以降は、アパレル商品などを現地のサイズに合わせて売り出しています。また、「MUJIGRAM」という無印良品やMUJIを出店する際に使うマニュアルも、各国の習慣や環境に合わせて、少しずつ違った内容にしているそうです。

ブランド力の向上

MUJIはプロモーションをあまり行わないため、実際に店舗に来て商品を見てもらうことがブランドの認知度をあげることにつながります。そのために、売り場面積が広い物件を確保して、カテゴリを限定せずに幅広く展開した商品を陳列しています。

また、新店舗には必ず「What is MUJI?」という無印良品の歴史を知ってもらうために様々な商品を並べたコーナーを設置しています。

SPAによるハイリターン

SPAというハイリスク・ハイリターンなビジネスモデルを採用していることも成功のカギと言えます。SPAとは製造小売業のことで、自社で企画した製品を直営店で販売する業態を言います。企画の段階から自社で行うため、雰囲気を統一させた商品を生み出すことができます。

ただ、その雰囲気が受け入れられなければ、大量に在庫を抱える可能性があるため、ハイリスクな手法でもあるのです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。これまで見てきたように、MUJIは海外ビジネスを成功させるための様々な戦略を開発しています。今後、ビジネスの海外展開を考えている方も、ぜひ参考にしてみてください。

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