海外市場への進出や現地での事業展開をする会社にとって、事前の「海外リサーチ」は欠かせません。
近年では外国人について調べたい研究者や学生も増えているでしょう。

しかし、海外リサーチにはそれなりの時間とお金がかかり、成功させるには正しい方法で行う必要があります。

この記事では、海外リサーチの基本的な種類や方法、成功させるためのステップについて詳しく解説します。

海外リサーチとは? 種類と目的

海外リサーチについて考える

海外リサーチとは、海外で新しい商品やサービスを広げるための調査のことです。

たとえば、日本国内で成功した商品やサービスが、そのまま海外でも通用するとは限りません。
過去には、日本企業が国内で高評価を得た製品を海外で展開した際に、現地の文化や習慣に適応していなかったために需要をつかめず、撤退を余儀なくされたケースもあります。

そこで、海外調査が重要となります。市場の動向・競合の状況・文化的な違い・法規制などを事前に調べた上で適切な戦略を立てることでリスクを最小限に抑えることが可能です。

以下では、代表的な3つの調査の種類と、その目的について解説します。

市場調査

市場調査は、ターゲット市場の需要や競争環境を理解するために行われます。
とくに次のようなポイントが調査対象となります。

消費者ニーズの分析

現地の消費者がどのような製品やサービスを使用し、求めているかを明らかにします。
年齢層、収入層、ライフスタイルによるニーズの違いを把握することで、商品やサービスを現地仕様に最適化できます。

競合分析

現地で既に展開している競合企業やブランドの特徴を調査します。
価格設定、流通チャネル、マーケティング手法のトレンドを知ることで、その国に合わせた施策の打ち出しや差別化戦略を構築できます。

文化調査

文化調査は、ターゲット市場の人々が持つ価値観や行動パターンを把握するために行います。
以下のポイントに注意しましょう。

文化的価値観や行動の違い

言語、宗教、慣習などが消費者の購買意思決定にどのように影響するかを調べます。
これにより、現地で受け入れられる製品設計やプロモーションが可能になります。

コミュニケーションスタイル

広告やマーケティングのメッセージがどのように解釈されるかを把握します。

国によって言葉のニュアンスや魅力を感じる伝え方、デザインなどは異なります。
現地の人々が「良い」と感じるアプローチ方法を把握することが重要です。

法規制調査

法規制調査は、現地の法律や規制を理解し、法的リスクを避けるために必要です。
とくに以下の項目を確認することが重要です。

法律を持つ人

現地の法律や規制

輸入品に関する規制、現地での事業登録手続き、環境基準などを確認しましょう。
もっともトラブルの多い項目なので、念入りに行う必要があります。

税制や貿易障壁

関税、輸出入制限、特定の産業に課される税金など、現地でのビジネスコストに影響を与える要因を調査します。

海外リサーチ:おもな4つの調査方法

調査の目的を決めたら、調査方法の選定にすすみましょう。

海外リサーチの調査方法は以下の4つに分けられます。

①:アンケート

②:インタビュー

③:文献・論文

④:SNS

方法によって調査にかかるお金や時間、えられる情報の信頼性、あつめたデータの量が異なります。
以下で詳しくご紹介します。

海外リサーチの調査方法

調査方法① アンケート

最もオーソドックスな方法がアンケートです。

アンケートは実施が簡単で、回答者にも負担が少ないメリットがあります。
作成や回答にかかる時間も少なく、他の方法に比べてかかる費用も少なめです。

アンケート調査は基本的にネット上で行います。調査会社によっては海外リサーチに特化しており、すでに外国人が登録されている場合があります。
新たに回答の対象者を探さずに、登録ユーザーを使ってすぐに調査ができるので、積極的に活用しましょう。

調査方法② インタビュー

調査対象者に直接質問したり、対話をする方法がインタビューです。

海外リサーチでは、比較的ポピュラーな方法です。
インタビュアーが直接出向いて調査をするので、時間と費用がかかるという欠点がありますが、ほかの調査とくらべて対話形式で質問できるため、思い通りの調査がしやすい利点があります。

調査方法③ 文献・論文

アンケートやインタビューは「直接的な調査方法」なのに対し、文献や論文調査は「間接的な手法」です。

対象者へのアンケートやインタビューは、文献や論文ですでに行われていて、その分析結果や考察まで含めて調査内容を読むことができます。

ネット上で公開されていることもありますが、シンクタンクや企業が公開する情報はほとんど有料な上、高額な場合が多いです。また、情報が過去の海外リサーチに限定されるため、最新のトレンドや調査項目を探すのには役立たないこともあります。

調査方法④ SNS

SNSを通じた情報収集は、費用をかけずに手軽に情報を集められる方法です。

ネット記事や文献データによく使われており、だれでも簡単に行えます。
具体的には、GoogleやX(twitter)、Facebookなどでユーザーの声を拾い上げます。

しかし、説得力のあるデータを作るのは難しく、SNSを通じた分析にはある程度の専門性がもとめられます。

海外リサーチはアウトソースすべき?

調査方法を決めたら、つぎに誰がやるのかを決めます。
その際に「アウトソース」と「自己調査」のどちらかから選びます。

アウトソースとは、海外リサーチを専門にやっている会社や人に依頼して、代わりに調査してもらう方法です。
一方で自己調査は、自社のメンバーが直接調査します。

以下ではアウトソースのメリットとデメリットを解説します。

海外リサーチはアウトソースすべきかを考える女性

海外リサーチをアウトソースするメリット

メリット① 現地の専門知識を活用できる

アウトソース先は現地市場や文化について深い知識を持っています。
そのため、自社だけでは得られないような正確で詳細な情報を得ることができます。

メリット② 時間とリソースの節約

自社で調査を行う場合、現地調査員の手配やデータ収集の手間がかかりますが、アウトソースすることでその負担を軽減できます。
また、一定の費用はかかってしまいますが、社内でやるときの出張費や人件費と比べれば比較的安く済みます。

メリット③ 高品質なデータの取得

自社でデータを集められても、それを信憑性の高いデータへと変える分析力が必要です。

専門的な調査機関はデータ収集と分析のノウハウを持っており、どちらも任せられます。
海外リサーチが成功する確率を高められる上に、大きな時間と労力の削減につながります。

海外リサーチをアウトソースするデメリット

デメリット① 自社の意図が正確に伝わらないリスク

自社の意図やニーズをアウトソース先に正確に伝えるのが難しい場合、期待する成果が得られない可能性があります。その点、自己調査では自社が直接調査を行うため、調査目的や質問内容を細部までカスタマイズすることができます。

とくに、海外の調査会社に頼む場合には難しく、注意しなければなりません。
明確な調査対象や目的を選定してから、調査を任せるようにしましょう。

デメリット② 機密情報の漏洩リスク・コストの増加

外部機関に依頼する場合、自社の戦略や市場調査の目的といった機密情報が漏洩するリスクがあります。
また、調査内容や質によってはコストが増加する場合があるので注意しましょう。

初めての海外リサーチはアウトソースがおすすめ

アウトソースをおすすめする女性

このようなメリット・デメリットがありますが、初めての海外リサーチの場合はアウトソースがおすすめです。

調査にかかる時間やリソースは思っているよりも多大である場合がほとんどです。
また、現地に精通した専門家の知見を活用し、高品質なデータを確実に収集することでリサーチが失敗してしまうリスクを抑えられます。

調査会社を選ぶポイント3選

では、海外リサーチを任せる調査会社はどのように選べば良いのでしょうか。
依頼前に確認すべきポイントとして以下3つがあります。

ポイント①:調査可能な国数

ポイント②:定性調査か、定量調査か

ポイント③:分析や示唆だしまで依頼できるか

3つのポイントを詳しく解説します。

調査会社を選ぶポイントを解説する女性

ポイント①:調査可能な国数

海外アンケートを実施する際に確認したいのが、対象にしたい国の調査が可能かどうかです。
依頼する調査会社によっては、調査対象外となる国もあります。

たとえば紛争地帯や渡航禁止が出ている国は調査が難しいでしょう。
ほかにも調査会社の人材が、その国の言語に対応してないケースや、現地でのアンケート調査への対応がないケースもあります。

ポイント②:定性調査か、定量調査か

定性調査とは「質的調査」のことで、明確な数字では集計できないデータを集計して分析する方法のことです。
たとえば会話の内容や言葉の文面から、その人の背景や価値観を明らかにできます。

定量調査は「数字にして集計することができる」データを集め、それを解析する調査のことです。
ある質問に対して「はい/いいえ」の2択や、数字・番号で解答できるため、結果も数字や割合で表せます。

これらの調査にはそれぞれ長所や短所があります。それゆえに、より自分たちが調査したい内容にあった方法を選ぶことが必要です。
調査会社によって実施方法が異なるため、依頼前に確認しましょう。

ポイント③:分析や示唆出しまで依頼できるか

海外のアンケートでは、調査会社がデータを集めて依頼者にそのサンプルを納品します。しかし調査の分析まで対応しているかは調査会社によって異なります。

分析ができない調査会社に依頼する場合は、アンケートの結果をサンプルとしてそのまま渡されるため、受け取ったデータを自分たちで分析して、示唆出しまでする必要が出てきます。つまり、分析や示唆のできる人材が不可欠となるのです。企業によってはアンケートを上手く活用できないところも出てくるでしょう。

一方で、調査会社が分析や示唆出しまでできる場合、人材が不十分でも、アンケートの調査結果を活用した事業展開や調査報告書の作成、製品のフィードバックなどが容易に行えます。そのため、分析や示唆出しの対応については、依頼の前に確認することが肝要です。

おわりに

今回は海外リサーチの基本的な種類や方法、成功させるためのステップについて取り上げました。
海外リサーチは実施するリソースやコストを考えると、専門に行っている調査会社に任せるのがおすすめです。

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