「ベジタリアン」、「ヴィーガン」という言葉の意味を知っていますか?さまざまな国・地域からの観光客が増加している今、よくつかわれる言葉ですね。

このように多様な食習慣や宗教習慣をもつ人の割合は、これからの日本でより増えていくと考えられます。日本で飲食業や食品にかかわるビジネスをしている人は、こういった習慣に対応していくことがもとめられるようになるでしょう。

しかし、「聞いたことはあるけど違いがよくわからない」「どのように対応するべきか迷う」という人がまだまだ多いと思います。

本記事では、この2種類の言葉の違いをくわしく説明します。また、日本でのそれぞれの割合や対応のしかたについても解説していきます。

ベジタリアンとは

ベジタリアンとは、主に穀物や野菜などの植物性の食品を摂取し、肉や魚などの動物性の食品を食べない人たちのことです。ただ、ベジタリアンのなかにもさまざまなタイプの人たちがいます。ここでは、5タイプのベジタリアンを説明していきます。

ラクト・オボ・ベジタリアン

もっとも一般的なベジタリアンで、アメリカのベジタリアンのほとんどがこのタイプです。

ラテン語が語源となっており、ラクト(lacto)は「乳」、オボ(ovo)は「卵」をあらわしています。

その名のとおり、植物性の食品にくわえてチーズなどの乳製品と卵を食べることができます。そのためほかのベジタリアンのタイプと比較しても、栄養がとりやすいというメリットがあります。

ラクト・ベジタリアン

植物性食品と乳製品を食べることができますが、卵は食べられません。南アジアで一般的に見られるタイプです。

インドでは牛を神聖視しているため、乳製品を神からのプレゼントだと考えて食べる人が多くいます。

オボ・ベジタリアン

植物性食品と卵を食べることができますが、乳製品は食べられません。生まれつき乳糖を分解する力が弱い乳糖不耐症などの人が、このタイプのベジタリアンになりやすいです。

ペスカタリアン

植物性食品、卵、乳製品にくわえて、魚介類も食べることができる人たちのことです。

ぺス(Pesce)はイタリア語で「魚」を意味しており、正式名称はぺスカ・ベジタリアンといいます。DHAなどの栄養をとりやすいというメリットがあります。

ベジタリアン教会はぺスカトリアンをベジタリアンには含めていません。しかし、一般的な認識では、ベジタリアンとして知られています。

フレキシタリアン

植物性食品をメインに食べますが、時と場合によって肉や魚なども食べる人たちのことをいいます。

ほかのタイプと比べても食事のスタイルが「柔軟」なため、フレキシブル(flexible)から由来してフレキシタリアンと呼ばれます。

ヴィーガンとは

ヴィーガンとは、植物性食品や製品をつかう人たちのことです。

ベジタリアンとは違って、動物性食品だけではなく、動物の成分が含まれていたり、動物実験をもとに作られた製品をつかわない人が多いです。

ここでは、8タイプのヴィーガンについて説明していきます。

ダイエタリー・ヴィーガン

英語で「食事」をあらわすダイエット(diet)という言葉から由来したタイプのヴィーガンです。

このタイプは、ヴィーガンというよりもベジタリアンに近いです。食事は植物性食品のみを食べますが、服などに動物性の成分が含まれていてもつかうことがあります。

名前のとおり、食事がヴィーガン活動のメインになっている人たちです。

エシカル・ヴィーガン

英語で「倫理」をあらわすエシック(ethic)という言葉から由来したヴィーガンです。動物の権利や福祉に強い関心をもっている人たちがこのようなタイプにわけられます。

そのため、服などの日用品においても、動物由来の製品をつかわないようにしています。

環境ヴィーガン

環境保護のためにヴィーガンになった人のことをいいます。

このようなタイプの人たちは、牛などの家畜をそだてて食品にしたり、製品にしたりすることが、温室効果ガスの排出や森林伐採などの環境破壊につながっていると考えています。

環境への悪影響をさけるために、植物性の食品・製品のみをつかいます。

ヘルスヴィーガン

健康上の理由からヴィーガンになった人たちのことをいいます。

動物性食品を食べないことにより、心臓病・糖尿病・肥満などの病気のリスクを減らすことを目的としています。

ロー・ヴィーガン

生の食材や48℃以下で調理された食品のみを食べる人のことをいいます。

野菜や果物に含まれるビタミンなどの栄養素をむだにすることなく食べるために、低温殺菌などもしません。48℃以上で調理された食品は食べられないため、ナッツや発酵食品をメインに食事をします。

ヘルスヴィーガンとおなじく、体調をととのえることを目的としている人が多いです。

ハイカーブ・ローファットヴィーガン

英語で「高炭水化物」を意味するハイカーブ(high-carb)、「低脂肪」を意味するローファット(low-fat)のとおり、炭水化物を多く食べ、脂肪の摂取をできるだけおさえるタイプのヴィーガンをいいます。

植物性食材であっても、アボカドやナッツなどの脂肪が多いものは食べません。

フルータリアン

果物をメインに食べるヴィーガンのことをいいます。

果物のほかに、ナッツや野菜なども食べることがありますが、基本的には果物だけを食べます。

80/10/10ダイエット

ヴィーガンのタイプというよりも、ヴィーガンスタイルのダイエット方法です。

カロリーの80%を炭水化物、10%をタンパク質、のこりの10%を脂肪からとる食事スタイルになります。生の果物と野菜を食べることが多いです。

ベジタリアン・ヴィーガンになる背景

ベジタリアンやヴィーガンになる理由としては、健康・倫理の2つがあげられます。

健康を目的とした食事制限

動物性食品をとらないため、コレステロール値がさがり、心臓病になるリスクをへらすことができます。

また、かわりに植物性食品をとるため、高血圧や肥満、糖尿病などをふせぐことができます。くわえて、抗酸化物質やファイトケミカルなどの栄養素が豊富なため、がんになりにくくなる可能性があります。

倫理的な目的の制限

動物や環境保護は、とくにヴィーガンの人たちが重視しています。動物の食肉加工や家畜の飼育は、動物を苦しめるだけではなく、温室効果ガスの増加などの環境破壊にもつながっていきます。

植物性食品や製品は、環境への悪影響が少ないため、より持続可能な生産ができる、という考えの人たちもいます。

食事制限と宗教との関係

ベジタリアン・ヴィーガンの考えは、宗教と強くかかわっています。動物保護の観点から食事制限をおこなう宗教も多いです。

例として、いくつかの宗教を紹介します。

ヒンドゥー教では、アヒンサー(非暴力)の精神にのっとり、動物の殺生が禁止されています。

ただ、ヒンドゥー教の本拠地であるインドでは、神の動物である牛からとれる乳製品は聖なるものとされており、インド料理に多くつかわれています。そのため多くのヒンドゥー教徒はラクト・ベジタリアンです。

仏教にも、非暴力の考えにもとづいて食肉を禁止し、ベジタリアンになることをすすめる宗派が存在します。

教徒のなかには、動物製品の生産にともなう苦しみをなくすために、完全にヴィーガンになる人もいます。

キリスト教では、決められた期間に断食をおこない、そのあいだはできるだけ肉を食べません。とくに正教会という宗派では、ベジタリアン・ヴィーガンになる人が多いです。

食事にもっとも厳しい宗教は、ジャイナ教です。ヒンドゥー教・仏教とおなじく非暴力の考えにのっとり、厳格なヴィーガン食をおこなっています。

肉、魚、鶏肉はもちろん、根菜類(ジャガイモ、玉ねぎ、ニンニクなど)も避けます。根菜を食べることで植物を殺すことになると考えられているためです。

どのように対応するべきか

最初に説明したとおり、外国人観光客が増加してきている日本では、こういったベジタリアン・ヴィーガンに対応した食事を用意することにより、新規の客層を獲得できます。

図1(参考:観光庁)からもわかるとおり、さまざまな国から多くのベジタリアンが日本旅行をしています。とくに台湾は、50万人以上にものぼっており、決して無視できる数字ではありません。

こういったベジタリアン・ヴィーガンの人たちを受けいれるにはどういった対応が必要なのでしょうか。ここでは、メニュー表記・食材の選び方・PRの3点にわけて説明します。

メニュー表記の工夫

メニューにイラストや英語でベジタリアン・ヴィーガンでも食べられる料理があることをアピールしましょう。また、つかっている食材も英語で表記することにより、あとからのトラブルをふせぐことができます。

例えば、出汁をとるときにかつおぶしではなく昆布をつかっていること、調味料も動物性食品が含まれていないことを説明する必要があります。口頭での説明は難しいため、メニューを見てわかるようにしておくと楽です。

図2(参考:観光庁)にあるように、ベジタリアン対応があるかわからない店でも利用する観光客は多くいます。

そのため、野菜のみのメニューなどはしっかりと英語で書いておくことをおすすめします。「メニューが理解できなかったから何もたのめなかった」ということをふせぐためにも、英語だけではなく、ほかの言語にも対応しているメニューをいくつか作っておくと安心ですね。

食材の選び方

ベジタリアン・ヴィーガンの人がどのような食材を食べているかを確認し、選ぶ必要があります。さきほど説明したように、タイプによって食べられる食材は違ってきます。もしわからなければ、口頭で確認をとるなどの対応をしましょう。

図3(参考:観光庁)にあるように、日本旅行では食事の基準を緩めるベジタリアン・ヴィーガンの人は多いです。「ベジタリアンだからこれは食べられないだろう」と決めつけずに、メニューや口頭で食材の確認をとることが大事になってきます。

ベジタリアン対応のPRの工夫

メニューにベジタリアン・ヴィーガン対応の表記をのせるだけでは、PRができません。よりアピールするために、店のホームページやgoogleマップなどのオンラインツールに対応していることをのせましょう。

日本ベジタリアン協会などが出しているマークで、安心して食事できることをアピールすることも重要です。

ただ、ベジタリアン認定マークがないと利用しないという人は少ないので、あくまでもわかりやすい目印という認識をしておきましょう。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

ベジタリアンとヴィーガンについての理解を深め、マーケティングをおこなうことは、今後のビジネスの持続・拡大に必要になってきます。

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