今年の1月にアメリカのThe New York Times(ニューヨーク・タイムズ)が発表した「52 Places to Go in 2024(2024年にいくべき52カ所)」のリストに、山口市が選ばれたのはご存じですか。

2024年のリストでは、日本でランクインした唯一の都市となりました。このリストにのったためか、山口市の今年の観光客数は国内外で大きくふえ、観光業により力をいれています。

なぜ、東京や京都、大阪などの有名な都市は選ばれなかったのでしょうか。その理由は、現在の観光のトレンドにあります。

この記事では、山口市をニューヨーク・タイムズのリストに推薦したCraig Mod(クレイグ・モッド)氏の記事、そして観光のトレンドを引用しながら、今観光地に求められている要素を解説します。

クレイグ氏が山口市に感じた魅力

まず、クレイグ氏がニューヨーク・タイムズにのせた山口市の魅力についての記事の一部を紹介します。

“Yamaguchi is often called the Kyoto of the West, though it’s much more interesting than that — and it suffers from considerably less tourism pollution. A compact city of about 190,000, it lies in a narrow valley between the Inland and Japan seas.” (Mod, 2024)

「山口市はよく『西の京都』と呼ばれることがあるが、実際はもっとオリジナリティあふれる魅力をもった街だ。ほかの観光地と比べて観光公害がほとんどなく、瀬戸内海と日本海の間にある人口19万人ほどのコンパクトな都市である。」

そして以下は、クレイグ氏が自身のブログにのせた山口市への何回かの旅行についての記事です。

“It has a vibrant sense of life being lived as you walk its streets. It’s part of the growing pantheon of smaller cities in Japan attracting younger entrepreneurs. It is eminently walkable — in fact, it seems to demand walking, rewards walking. The streets are narrow, circuitous, some along small rivers, the whole of the city cradled in the southwest-northeast valley starting at Shin-Yamaguchi, extending to Niho. Walls of serrated mountains frame its life and guide you into and own of its central spaces.” (Mod, 2024)

「通りを歩けば、街の活気を感じられる。若い起業家をひきつけるような、日本でふえつつある小都市のうちの1つだろう。歩きたくなるような街なみで、実際、歩いて楽しむのに向いている街だといえる。通りはせまく、曲がりくねっていて、小さな川にそっているものもある。街全体は新山口から仁保までつづく谷に包まれており、周りをかこんだ山々がそこでの生活をふちどって独自のものにしている。」

観光公害とは、いきすぎた観光客の増加(オーバーツーリズム)がもたらす害のことをいいます。

例えば、ゴミのポイ捨てや建造物への落書きなどがこの観光公害に含まれます。世界的に有名な都市ではないからこそ、比較的観光客が少なく、こういった観光公害が起こりづらいのです。

2つの記事からわかるとおり、クレイグ氏は山口市のコンパクトさを魅力的だととらえています。

オーバーツーリズムが問題になっている京都などの都市とはちがって、静かにこじんまりと楽しめるところが評価のポイントのようです。

引き続きクレイグ氏のブログの記事を見ていきましょう。

“I get asked all the time: Why a city like Yamaguchi? It strikes the right balance. You’ve got Churamu and you’ve got Log. Both serve coffee, but one’s decades old, winding down, and the other’s vibrant and just getting started. You have temples, but you also have kilns snuck into the corners of those temples. You have World Heritage pagodas paired with well-regarded jazz kissas. You have monuments to old poets, and epic mountain walks to and from the ocean. . . . Cities like Yamaguchi and Morioka occupy an Other space — an alternative space between the disappearing, somewhat unsustainable, countryside villages, and the non-stop megalopolises. If Kyoto and Kanazawa and Hiroshima are the A-sides of Japan, Yamaguchi and Morioka are B-sides — the side often containing the understated genius of a record.” (Mod, 2024)

「なぜ山口市なのか、とよく聞かれる。私が山口市を選んだ理由は、街のバランスがとれているからだ。チュラムがあり、Logがある(どちらも同市にあるカフェ)。2つともカフェだが、1つは何十年もつづいていてゆったりとしているのに対して、もう1つはあたらしくできたばかりでにぎわっている。寺があり、その片隅に陶器を焼くための窯がある。世界遺産の仏塔と、人気のジャズ喫茶がある。有名な詩人の記念碑があり、山から海までつづく広い道がある。(中略)山口市や盛岡市(クレイグ氏は盛岡も気に入っている)のような都市は、消えてしまいそうなほど衰退している都市と留まることなく成長している都市の真ん中にあると考えていい。もし京都市と広島市がレコードのA面だとすれば、山口市と盛岡市は、知られていない名曲がつまっているB面だといえる。」

クレイグ氏は、山口市を推薦した理由を「街のバランスがとれている」からといっています。ここには2つの意味がこめられています。

1つめは、街そのものの見どころがとても多いということです。世界遺産に頼りすぎず、街なみや店、景観などで観光客を満足させることができます。

2つめは、自然と都市のバランスのよさです。東京や大阪のように、開発が大規模にすすんでいるわけでもなく、かといってさびれているわけでもないという絶妙な雰囲気がゆったりとすごすのに最適だとクレイグ氏は考えています。

このような地方都市めぐりが最近の旅行のトレンドになってきています。

例えば、クレイグ氏のように閑静な場所で自然と都市の融合を楽しみたいという人もいれば、ラフティングなどの自然のなかでおこなうアクティビティをやりたいという人もいます。

少し前には「爆買い」という言葉が流行するほど、いわゆるモノ消費が訪日観光客の目的となっていました。

しかし、いまではアクティビティや日本での日常生活を体験するなどの経験を重視するコト消費が観光の中心となってきています。

世界的なアドベンチャーツーリズムの流行

さきほど説明したコト消費につながってくるのが世界的なトレンドとなっているアドベンチャーツーリズムです。

アドベンチャーツーリズムとは、自然のなかでさまざまなアクティビティを楽しむ観光のことをいいます。

これには、ハイキング、山登り、ラフティング、サイクリング、スカイダイビング、スノーボード、ダイビングなど、さまざまなアウトドア活動がふくまれます。

このアドベンチャーツーリズムが流行している理由としては、3つあげられます。以下に、くわしく解説します。

健康志向

健康のために多くの人々がフィットネスやウェルネスに対しての関心を高めている現在、体を動かす機会が豊富なアドベンチャーツーリズムは、まさに理想の旅行のかたちだといえます。

また、都市での生活に疲れた人々が、自然の中でリフレッシュするためにも役立ちます。自然環境でのアクティビティは、ストレス解消やメンタルヘルスの回復にもつながります。

SNSの影響

インスタグラムなどのSNSでシェアされる旅行先の写真や動画をみることによって、同じようなことをしたいという気持ちがあらわれます。

コト消費で解説したように、現在の観光客は、物質的なものよりも体験や経験をより重視する傾向があります。その点、アドベンチャーツーリズムは、観光先独自の忘れられないような体験をすることができます。

エコツーリズムの一環

エコツーリズムの一環として、自然環境に配慮したアクティビティがふえてきています。これにより、アドベンチャーツーリズム自体も注目をあびています。

観光客の増えすぎによってひき起こされる観光公害などを避けることにも効果的です。

観光客の集中は良いことばかりじゃない!京都におけるオーバーツーリズムの実態と解決策とは?

おわりに

いかがでしたでしょうか。日本の地方都市の観光地にもとめられているものが、山口市の例から理解いただけましたか。

アドベンチャーツーリズムに関しても、観光に取り入れていくことが重要だと認識していただければと思います。

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