2024年6月、日本をおとずれた外国人の人数は3,135,600人を記録しました。

これは単月では過去最高の人数で、2024年上半期全体でみても17,777,200 人という数値を記録し、同時期でも過去最高を達成しました。

コロナ禍からの本格的な回復と長くつづいている円安のおかげで、下半期もインバウンドはふえつづけると予想されています。

そのような観光客の最近のトレンドは「コト消費」です。

コト消費とは、観光先ならではの体験・経験に費用をかけることをいいます。

反対に、「モノ消費」という観光先でショッピングに費用をかけるという意味の言葉があり、これは2019年あたりによくみられた消費動向です。日本でいえば、中国人観光客の爆買いがモノ消費の代表例としてあげられます。

いまでは世界中の観光客がモノ消費からコト消費にうつっており、日本も例外ではありません。

この記事では、特に観光客の需要がふえている日本食についての分析をしていきます。

ふえる観光客、ふえるコト消費

こちらは観光庁が外国人観光客にきいた訪日旅行で期待していることを2019年全体と2024年の1~3月で比べた図になります。

ショッピングはモノ消費、それ以外をコト消費として見てみると、ほとんどのコト消費の数値がふえていることがわかりますね。

特に日本食の数値は2024年には80%を超えており、多くの観光客が日本食を目的としています。

また、酒の項目も数値を伸ばしています。最近は日本酒や日本産ウィスキーなどの人気があがっており、国外でも日本酒ソムリエなどの職業や日本酒グランプリなどができつつあります。

くわえて、自然観光や繁華街の散策などの日本の雰囲気を感じられるものや、伝統文化や日本の日常生活の体験ができるものも人気となっています。

ショッピングも数値は上がっていますが、これからはコト消費がメインに移っていくと考えられます。

世界で人気の日本食:観光客は日本食のどこが好き?

先ほども見たように、日本食を目的として日本に来ている観光客が特に多くなっています。では、なぜここまで日本食が人気になっているのでしょうか? 主な理由としては3つあります。

日本食=健康食?

日本食は魚、野菜、米を中心とした食事で、健康にいいとされる食材が豊富です。

また、腸内環境をととのえる効果があるとされている発酵食品がよく使われています。例えば、しょう油、みそなどがあげられます。朝ごはんとして食べられる納豆も発酵食品の1つですね。

こういった栄養のある食材をふんだんに使っている日本食は、ベジタリアンやヴィーガンなどの健康を意識している現代人に人気があります。

日本食の見た目や味の多様性に惹かれて

見た目や味がバラエティ豊かなところも魅力の1つです。

見た目に関しては、料理の盛りつけかたや食器の選び方に料理人の個性が出ます。また、日本特有の四季に合わせて違う食材を使うため、料理の見た目が四季によって変わるところも物珍しさを感じられます。

味についても、焼く、煮る、蒸す、揚げる、生で食べるなどの多様な調理法があるため、調理法が違っていれば、同じ食材を使っていても違う味を楽しむことができます。

また、ほかの国では見られない「うま味」も大きな特徴です。鰹節、昆布、椎茸などからとれる出汁が、料理に深い味わいを与えます。

地域ごとに特色のある料理があることも、味の多様性につながっています。

日本文化に影響される観光客

アニメや映画に出てくる食事から興味をもつ人が多いです。

例えば、海外人気が高いジブリの作品では、食事シーンが細かく描写されています。『崖の上のポニョ』のチキンラーメンを作るシーンや『となりのトトロ』のお弁当を作るシーンなどで日本人がよく食べているものを勉強する人もいます。

また、海外で日本食レストランが増えていることも日本の食文化を広めています。アメリカやアジアを中心にして、ラーメンや居酒屋などが次々と出店し、現地の人が日本食を楽しむ機会は以前より格段に多くなっています。

日本食の料理教室やイベントも日本食の認知度をあげることに役立っています。

ここで、農林中央金庫が2023年におこなった「訪日外国人からみた日本の“食”に関する調査」をみていきましょう。

寿司は人気・認知ともにトップ

表1

訪日時に初めて食べた日本食
1位寿司
2位すき焼き
3位天ぷら

表2

訪日時に食べた日本食
1位寿司
2位天ぷら
3位ステーキ・焼肉

表3

訪日時に初めて食べた日本の食材
1位わさび
2位生魚
3位魚卵

(参考:農林中央金庫、複数回答)

上の表からもわかるように、行われた調査のなかの料理に関する質問のほとんどで寿司が圧倒的な1番人気という結果になっています。

表2にもありますが、訪日時に食べる日本食は寿司が1番多く、また表3ではわさびがトップになるなど、日本旅行中に寿司を食べる観光客がとても多いことがうかがえます。

また、表1~3まで国別の割合でみていくと、ほとんどの項目でフランスが高い割合となっており、特に日本食に対して高い関心を持っているようです。

逆に、中国は全体的に低い割合となっています。表3ではほとんどの国で寿司が1位となっていますが、中国ではうなぎが1位になっています。くわえて、刺身が寿司よりも人気となっています。

表3であげられている食材のうち、日本にきて初めて食べた食材のうちトップ3は松茸、生魚、わさびとなっています。

ここでもフランスの割合は高く、さまざまな食材に積極的にチャレンジしているようです。

くらべて韓国は初めて食べた食材の割合が低く、距離的な近さや若者を中心とした日本ブームなどによって日本旅行を多くしているため、初めて食べる食材があまりないと考えられます。

若い世代の観光客は観光先でも自炊?

図2

上は訪日時に食事をしたり食材を買ったりする場所を示した図(参考:農林中央金庫)です。

具体的な数値をあげていくと、レストランは74.4%と最も利用する人が多い場所になっています。ホテルのレストランは43.3%、屋台は42.9%とほぼ同率で、旅館のレストランは33.7%となっています。

つづいてコンビニが39.7%、スーパーマーケットが35.3%となっており、図にはありませんがショッピングモールが27.6%、デパートの地下が24.8%とさまざまな場所で食材を買っていることがわかります。

国別でみると、どこの国もレストランが最も多く利用されているのですが、フランスが特に高い割合で利用しています。ホテルのレストランはアメリカとイギリスがどちらも60%ほどが利用しており、屋台はイギリスとフランスが最も多く利用しています。

また、中国では屋台、スーパーマーケット、ショッピングモールの割合がほかとくらべて低くなっています。

年代別にみると、29歳以下の若い世代がスーパーマーケットを多く利用していることがわかっています。

考えられる理由としては、費用の節約があげられます。上の世代とくらべると貯金が少なく、費用面で不安定な傾向にあります。円安がすすんでいるとはいえ、観光をしているあいだはずっとレストランで食事をとるというのはやはり安くありません。

そのため、Airbnbなどのシェアスペースに泊まってスーパーマーケットで買った食材で自炊をし、食費を含めた旅費をおさえていると考えるのが自然です。

日本とほかの国で食べる日本食は違う? 観光客の好みとは

図3

 

上の図3は、自国でどのくらいの頻度で日本食を食べるかを示したもの(参考:農林中央金庫)です。週に1回が22.8%で最も多くなっています。しかし、人によってばらつきがあるため、数値的に大きな差はみられません。

国別でみると、イギリスは毎日日本食を食べている人が15%ほどで、特に高い割合となっています。

図4

図5

図4、5はそれぞれ自国と日本の日本食の違いと味を聞いたもの(参考:農林中央金庫)です。

図4では、(日本と自国で)「違った(とても+やや)」と答えている割合が特に高いのは中国とフランスだとわかります。それに対して、イギリスと韓国は7割台と低めです。

また、韓国は「とても違った」と答えている数が少ないのがわかりますね。これはさきほども書いたことと重なりますが、日本に地理的にとても近く、また日本ブームがよくおこっているため、韓国国内に本格的な日本食レストランが多いからだと考えられます。

「全く同じだった」と答えている割合はどの国でも低いので、やはり本格的な日本食を食べるには日本が1番なのでしょう。

図5では、「日本」の日本食のほうがおいしいと答えた国は中国、アメリカ、イギリスが9割台と特に割合が高く、フランスも8割台です。しかし韓国は6割と低めで、やはりこれも韓国国内で食べられる日本食が本場に近いことをあらわしているといえます。

図3~5をまとめると、自国と日本の日本食の見た目や食材に大きな違いはなくても、味は日本で食べるもののほうがおいしいということがわかります。

今ではほかの国にも日本食が広まっていますが、その国独自のアレンジがされているため、より本格的な日本食を食べたい人たちにとっては日本食自体が日本旅行をリピートする理由となるのです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。日本食はその見た目や味、そして栄養バランスから、これからも世界的な注目度がどんどんあがっていくと考えられます。観光客に人気の料理をメインにして、ビジネスマーケットを広げていきましょう。

ほかに外国人にかかわるデータなどを詳しく知りたい、という方は、ぜひ「Guidable Marketing(ガイダブル・マーケティング)」をお試しください。日本でもっとも多くの外国人人材が登録しているともいわれる「Guidable Jobs(ガイダブル・ジョブス)」から独自のデータを算出できます。

興味をお持ちの方は、ぜひいちどお問合せください!