訪日インバウンド向けのマーケティングをくわしく解説! 外国人観光客が日本でやりたいこととは?
日本を訪れる外国人観光客は、年々増加しています。
JNTO(日本政府観光局)『訪日外客数(2024年12月および年間推計値)』によると、2024年の訪日外国人数は約3,686万9,900人で、前年比で47%増、2019年比では15.6%増と、過去最高であった2019年の3,188万2,049人を約500万人上回り、年間過去最高を更新しました。
桜・紅葉シーズンや夏季休暇期間など、ピークシーズンを中心に各国からの観光客数が単月での過去最高を更新し、東アジアのみならず東南アジア、欧米豪・中東においても実数を増やしたことが、年間過去最高の更新につながったと見られています。
今年の万博開催に向けて策定された第4次観光立国推進基本計画では、「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」の観光において重要な3つの柱が示され、各地域の観光客に合わせたマーケティング戦略に注力する意向が固まっています。
本記事では、JNTOが2023年6月に発表した『訪日マーケティング戦略』について、くわしく解説していきます。
訪日マーケティング戦略とは
先ほどお話した観光立国推進基本計画を踏まえ、「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」の実現のために、国別・ターゲット層別で細やかなマーケティングを行う取り組みのことです。
取り組む期間は、観光立国推進基本計画と同様に2023年度~2025年度の3年間になります。
「持続可能な観光」とは、サステナブル・ツーリズムとも呼ばれ、地域の環境・文化・経済の持続可能性を高める観光の実現を指しています。具体的には、風土に根ざした食文化や地域に根付く伝統芸能などの、日本の独自性の根源である自然(地形や気候・四季)とその自然によって育まれてきた豊かな文化を推し出すことが目的です。
国別・ターゲット層別のマーケティング戦略
東アジア
韓国市場
ターゲット | 興味があるコンテンツ | 特徴・留意事項 |
訪日経験2回以上あり 20~30代 女性 | ・ローカルフード、お酒 | ローカルフードへの興味が高い →コンテンツと地方を絡めてPRするコスパの良さを重視する傾向にある →高コスパを前面に出した広告を出す |
訪日経験2回以上あり 20~30代 夫婦、家族 | ・ローカルフード、ミシュラン店 | 上質なコンテンツへの関心が高い →消費単価向上の中心ターゲットに設定 |
訪日経験2回以上あり 40代以上 夫婦、家族 | ・ローカルフード ・酒造訪問 ・温泉、湯治 ・歴史のある宿泊施設 ・自然をめぐるツアー | 旅行会社を通じた予約が多い →旅行会社を活用した共同広告でPRする地方訪問希望率が高い →地方誘客促進の中心ターゲットに設定 |
韓国は、海外旅行者のほとんどが訪日旅行経験者である成熟市場として知られています。2024年には881万7,800人が日本を訪れており、最も訪日観光客数が多い国となりました。日本と距離が近く、気軽に行けるということもあり、リピート率もとても高いです。
しかし、観光客1人が1回の旅行で消費する消費単価が少ないことが課題としてあげられます。そのため、温泉やリゾートなどの高単価のコンテンツをアピールすることが必要です。
メインとなるターゲット層は訪日経験のある20~30代の女性や夫婦、訪日経験のある40代以上のファミリーとなります。20~30代は友人と旅行することが多く、20代以上はパートナーや家族と旅行することが多いことが特徴となっています。
中国市場
ターゲット | 興味があるコンテンツ | 特徴・留意事項 |
訪日経験2回以上あり 20~40代 夫婦、パートナー | ・豊かな自然 ・スキー、スノボ ・ローカルフード ・ショッピング ・温泉、湯治 ・伝統行事 | 「豊かな自然」に対する満足度が高い →アウトドアを重点的にPR |
訪日経験2回以上あり 20~40代 家族 | ・豊かな自然 ・スキー、スノボ ・ローカルフード ・夜景 ・遺跡、街並み | 「豊かな自然」に対する満足度が高い →親子で自然を楽しめるコンテンツを |
20~40代 215万円以上/月を消費する世帯 | ・伝統行事 ・お茶、生け花 ・ミシュラン店 ・ローカルフード ・エコツアー ・スキー、スノボ ・ビーチリゾート ・現代建築 | ファミリー層は海外旅行で日本以外を選ぶ →ファミリー層対象のPRを強化コンテンツの |
訪日未経験 20~40代 夫婦、パートナー | ・豊かな自然 ・温泉、湯治 ・伝統行事 ・アニメ、映画の聖地巡礼 ・ローカルフード ・ショッピング | 中小規模の都市居住者が多い →特に個人旅行者向けの情報提供が必要言語や |
中国も、訪日観光客数がとても多い国として知られています。2024年の観光客数は698万1,200人で、韓国に次ぐ多さとなりました。しかし、韓国をはじめとした東アジアの国々と比べると訪日経験がある人の割合は少なく、内陸都市部の居住者やZ世代などの新規層の開拓が課題となっています。しかし、持続可能な観光という目的を守るために、オーバーツーリズムを防ぐことも重要です。
メインとなるターゲット層は、最大ボリューム層である20~40代になります。新規層だけではなく、リピーターの早期訪日や、高所得層の消費単価の増加をねらいます。
近年見られる特徴としては、北京冬季五輪をきっかけとして、スノーアクティビティを目的とする海外旅行需要が高まっています。そのため、食や温泉などと絡めた情報を発信することが効果的と思われます。
東南アジア
シンガポール市場
ターゲット | 興味があるコンテンツ | 特徴・留意事項 |
訪日経験2回以上あり 20~40代 夫婦、パートナー | ・豊かな自然 ・温泉、湯治 ・ドライブ ・ローカルフード ・お茶、生け花 ・伝統行事 | 継続的なリピーターの獲得をしたい →地方の訴求を強化ハネムーンなどに訪日を検討する →特別な機会に合わせた訴求が必要 |
訪日経験2回以上あり 20~40代 家族 | ・ショッピング ・フルーツ狩り ・酒造訪問 ・豊かな自然 ・温泉、湯治 ・テーマパーク | 個人手配の割合が低め →旅行会社との連携が重要地方の認知、訪問率ともに最高 →さらなる地方誘客促進がカギ |
20~30代 ひとり旅行、友人、兄弟姉妹 | ・豊かな自然 ・ハイキング ・スキー、スノボ ・カフェ ・アニメ、映画の聖地巡礼 ・温泉、湯治 ・お祭りへの参加 | 卒業旅行などに訪日を検討する →特別な機会に合わせた訴求が必要FITの割合が圧倒的に多い →BtoCの取組やBtoBtoCの取組が重要 |
シンガポールは、国籍保有者の7割以上が訪日旅行経験のあるリピーター中心の成熟市場です。
訪日旅行経験の多い20~40代を中心として、認知されていない地方の魅力、特別な機会に相応しい旅行や、学びの要素を含む旅行などの新しいコンテンツや旅のスタイル、閑散期を含む訪日旅行の魅力をPRします。このように多角的な訴求を行うことで、何度も訪日旅行する生涯リピーター層を育成できます。
そのため、1回あたりの旅行の消費単価を上げるだけでなく、生涯旅行消費額の拡大に注力するといえます。
北米
アメリカ市場
ターゲット | 興味があるコンテンツ | 特徴・留意事項 |
訪日経験2回以上あり 20~40代 2,150万円未満/年を消費する世帯 | ・ローカルフード ・ショッピング ・アウトドアアクティビティ ・アニメ、映画の聖地巡礼 | 3回以上訪日した人には北海道が人気 →アウトドアコンテンツが有望自然や歴史が高評価 →地方誘致につなげられる |
訪日未経験 20~40代 2,150万円未満/年を消費する世帯 | ・ローカルフード ・高級ホテル ・遺跡、街並み ・伝統芸能 | 日本旅行の検討が長い →継続的なアプローチが必要20~40代はオンラインで情報収集 →web、SNSでの広告が重要 |
訪日未経験 50代以上 2,150万円未満/年を消費する世帯 | ・遺跡、街並み ・美術館 ・ローカルフード ・お茶、生け花 ・料理体験 | 宿泊とアクティビティは旅行会社から予約 →旅行会社との連携が重要異なる世代の家族も意思決定をする →50代以外の需要も探る必要あり |
2,150万円以上/年を消費する世帯 | ・ローカルフード ・高級ホテル ・遺跡、街並み ・豊かな自然 | 旅行先を決めるまでの検討機関が長い →継続的なアプローチが必要アウトドア志向が強い →地方誘客の強化 |
アメリカの海外旅行の市場規模は推定2,600万人と言われています。2024年の訪日観光客数が272万4,600人であることを踏まえると、まだまだ伸びしろがあると考えることができます。
そのため、アメリカ市場においては、観光客数の増加がまず最優先される事項となります。訪日未経験者に対しては、BtoCの取り組みを行い、新たな訪日観光客の獲得をねらいます。リピーターに対しては、地方への観光ルート開拓してアピールし、地方誘客の促進と消費単価の向上につなげます。
また、アドベンチャートラベルやクルーズ旅行の私塾度が高いことを考慮して、50代以上の家族層による観光客数の増加、高所得者層による消費単価の向上にも取り組みます。
ヨーロッパ
イギリス市場
ターゲット | 興味のあるコンテンツ | 特徴・留意事項 |
20~30代 1,250万円以上/年消費する世帯 | ・豊かな自然 ・エコツアー ・ローカルフード ・酒造訪問 ・高級ホテル | 観光の情報源はオンライン →web、SNSでの広告が重要地方の認知度が低い →地方の魅力をPRして地方誘客 |
20~30代 400~1,250万円/年消費する世帯 | ・ローカルフード ・ミシュラン店 ・酒造訪問 ・豊かな自然 ・伝統行事 ・お茶、生け花 | 観光の情報源はオンライン →web、SNSでの広告が重要地方の認知度が低い →地方の魅力をPRして地方誘客 |
50代以上 1,250万円以上/年消費する世帯 | ・ローカルフード ・高速列車、ローカル線 ・伝統工芸品 ・高級ホテル | 情報収集は大手の新聞や旅行情報誌 →オフラインメディアに注力 |
50代以上 400~1,250万円/年消費する世帯 | ・豊かな自然 ・ハイキング ・ローカルフード ・伝統行事 ・遺跡、街並み | 情報収集は大手の新聞や旅行情報誌 →オフラインメディアに注力旅行会社を通じた予約率が高い →有力旅行会社との連携を強化 |
イギリスは、訪日旅行未経験者が8割を占めており、未成熟な市場です。そのため、日本独自の強みである伝統文化と近代都市を対比させたコンテンツなどをオンライン媒体を通じて発信し、新規層の獲得をねらいます。
50代以上の層に対しては訪日旅行者数の増加に取り組み、訪日意欲の高い20~30代に対しては地方誘客を促進します。また、高所得者層には上質なコンテンツをアピールして消費単価の向上をめざします。
イギリス人観光客の特徴として、SDGsやサステナブル・ツーリズムへの高い関心があります。そのため、そういったエコツアーなどを踏まえたPRを展開することが重要です。
おわりに
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